第17回 B/Sの「3類型」とそれぞれの対応(その3)

今回は、前回お伝えしたB/Sの3類型のそれぞれの状態を整理し、その類型が置かれた状況と、基本的対応策について考えていきたいと思います。(3類型の詳細については、前回のブログを参照して下さい)

Ⅱ型の場合です。この場合は創業からの時間軸によって整理していく必要があります。創業初期は過去からの利益蓄積が小さいわけですから、自己資本が小さくなるのは当然です。目安として5年後に20%以上の自己資本比率になるような計画を立てて取り組んで行きましょう。

創業期から一定年数経過しているにも関わらず、自己資本比率が低い(目安として30%以下)場合、銀行借入や取引先の支払債務といった他人資本に依存した経営体質に陥っていることが考えられます。他人資本に依存した経営状況の問題は、環境の変化に対して脆弱なことです。

経営活動の結果生み出した利益を、どのように活用するかは重要な経営判断です。利益の投下先は主に次の3つになります。

①経営と直接関係ない娯楽、福利厚生、金融資産等への投下
②次なる利益を創出するための新たな設備投資等への投下
③環境の激変に対応するための自己資本への投下 の3つです。

つまり、自己資本比率と、①と②のバランスをみれば、経営者が日常どのような価値観から経営判断をしているかが見えてきます。この辺りが、バランスシートをみれば経営者のものの考え方や性格が見えてくると言われるポイントの一つです。そういう視点でも、自社のB/Sを見直してみてはいかがでしょうか?

次回はⅢ形についてお伝えします!


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第16回 B/Sの「3類型」とそれぞれの対応(その2)

今回は、前回お伝えしたB/Sの3類型のそれぞれの状態を整理し、その類型が置かれた状況と、基本的対応策について考えていきたいと思います。(3類型の詳細については、前回のブログを参照して下さい)

まずI型の場合です。この場合、2段階に整理して考える必要があります。第一の段階が、会社の保有する資産を経営活動に投下したにも関わらず、結果として利益が出ていない段階です。これは、かなり危機的な状況だと言わざるを得ません。利益が出ていないということは、自社が社会に対して提供しようとしている価値が、社会(顧客)に認められていないということを意味しているのです。

取組むべきテーマは「ビジネスモデルの見直し」になります。現実を直視し、早急に自社のビジネスモデルのどこに問題が在るかを特定し、改善策を洗い出していくのです。自社の社員をしっかりと巻き込んで取組むことが必要かもしれません。もし、それでも改善策が見出せないようであれば、厳しいようですが、できるだけ早く会社を清算することを考えなければいけません。

次に、第二段階ですが、これは損益計算書上利益が出ているにもかからず、Ⅰ型になっている段階です。要因としては、負債の返済等で入ってくるキャッシュよりも、出て行くキャッシュの方が大きく資産が増加しないためにⅠ型になっているのです。キャッシュバランスを考えず、漫然と借入や割賦契約を結んだ結果です。良い財務アドバイザーがいないか、いても社長がその声に耳を傾けていない事が考えられます。
取組むべきテーマは、財務政策を見直し、銀行や割賦会社との交渉を行うことです。それをしなければ借入を返すために借入をすることとなり、何れ資金が枯渇します。銀行等の債権者も回収はしたいのですから、返済を前提とした計画を練り直し、説明をすれば交渉には乗ってくれるはずです。是非、航海士である会計事務所を上手に活用し、早急にⅠ型脱出の戦略を練って下さい。

次回はⅡ形についてお伝えします!


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第15回 B/Sの「3類型」とそれぞれの対応(その1)

一件内容を読み取りにくいと思われがちな貸借対照表(以下:B/S)ですが、簡単にかつ重要な情報を読み取る方法があります。その前提として、B/Sには3つの型があることをおさえて下さい。ここをおさえると複雑そうに見えるB/Sをシンプルにしてしまうことが可能です。これは自社だけでなく、ライバル企業やお得意様のB/Sを見る場合にも活用できますので是非覚えて下さい。

ここでは、B/Sの3つの型を『B/Sの3類型』と呼ぶことにします。先ず自社は勿論ですが、興味のある会社のB/Sがどの型に該当するかを確認してみて下さい。

自社の型を知るには『純資産÷総資産』を計算する必要があります。
この答えが
0より小さいのが「I型」
50%以下の場合が「II型」
50%超が「III型」
となり、それぞれ次のような図になります。

自社の決算書がどの類型に該当するかによって、取るべき対策や、将来に向けて考えるべき内容が全く変わってくるので、次回はそれぞれの類型別に、どの様なことを考え、対応するかについてご紹介します。まずは、自社の決算書がどの類型に該当するかについて確認し、是非次回を楽しみにお待ち下さい!


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第14回 『守備力』はこうして強化すべし!(その3)

貸借対照表(以下:B/S)の重要性をお伝えしてきましたが、B/Sをジックリ見たことのある人は少ないかもしれません。B/Sには大きく3つの情報が整理されています。どのような構造でその情報が整理されているかを理解すれば、皆さんに重要な気付きがあると思いますので、今回はその構造を説明してみたいと思います。是非お手元に自社のB/Sを準備して、同時に確認してみて下さい。

 (1) B/Sに向かって左(簿記用語だと「借方」)側には、自社が保有している「資産明細」が書かれています。例えば、「現金・預金」、回収予定の「売掛金」や「受取手形」、「機械等の設備」や「土地・建物」、「ゴルフ会員権」や「営業権」といった資産の種類と、その資産を取得した際の金額です。
 (2) B/Sに向かって右(簿記用語だと「貸方」)の上には、「資産を確保する為に他人からお金をいくら借りているか」が表記されています。銀行からの「借入金」は勿論ですが、今後支払う予定の「買掛金」や「未払金」は取引先から一時的にお金を借りている状態といえます。他人から調達しているので、これを「他人資本」と呼びます。
 (3) B/Sに向かって右(「貸方」)の下には、「資産を調達する為に自分で調達したお金」が幾らかが書かれています。例えば、創業時に出資した「資本金」や過去の経営活動で獲得した儲け(「利益剰余金」)です。これらは自力で調達しているので「自己資本」と呼びます。

自社のB/Sを見てください。「どんな資産を幾らで保有」し、その資金は「どこから調達しているのか」が確認できます。創業以来(2)と(3)で調達した資金を(1)の形に変えて「営業活動」を行い、結果として(3)として「お金を増やせているか?」という大きな流れが社長(船長)のイメージとズレていませんか?

船が沈む(会社が倒産する)時は、上記の流れに異常が生じてきます。ですから本物の経営者はB/Sから目を離さないのです。早速、航海士である会計事務所と一緒に自社のB/Sの確認をして下さい!「P/Lのプランニングではなく、B/Sのプランニング」が重要なのです。


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第13回 『守備力』はこうして強化すべし!(その2)

『守備力』は概ね貸借対照表(以下、B/S)に表れてきます。『攻撃力』をつかさどる損益計算書(以下、P/L)は、一会計期間(通常1年)が終わるごとに“0”にリセットされますが、B/Sは創業から会社を閉じるまで、ずっと繋がっていきます。そういう意味では、会社の歴史が刻まれるのがB/Sなのです。

B/Sには創業以来、経営活動において資金をどのように『調達』し、調達した資金をどのように『運用』しているのか、そして結果的にどれだけの体力を蓄積できているのかが表れています。とても重要な財務諸表なのです。しかし、B/Sをじっくりみる経営者は多くありません。何故なら、経営者の興味が売り上げと利益といった攻撃の状況確認、つまりP/Lに傾くからです。しかし、本物の経営者はB/Sを大切にすると言われます。何故なら、『攻撃力』を強くする前提として、人体でいえば基本体力となる『守備力』を強くすることが優先されることを知っているからです。

B/Sを見るポイントには2つの視点があります。
1)「調達」「運用」の結果、適切な体力がついているか?
2)投下した資本が効果的に回収される体質になっているか?\r\n\r\nこの2つの視点で自社のB/Sを確認し、どこに問題があるのかを絞り込み、体質改善に取り組んで行けばよいのです。会計期間毎に“0”にリセットされるP/Lの改善は短期的取り組みでできますが、B/Sの改善には時間が必要になります。「B/Sは一日にしてならず」なのです。次回は1)のポイントについてもう少し詳しく紹介していこうと思います。


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第12回 『守備力』はこうして強化すべし!(その1)

以前少し触れましたが、企業の財務戦略においては『攻撃力』よりも『守備力』の強化を優先させることが定石とされています。その観点から、『攻撃力』の問題の有無よりも、『守備力』の問題の有無のほうが、会社(船)にとって重要な指標であることを認識して頂きたいと思います。

守備力の構成要素は以下の通りです。
【安定力】
1)経営安全率…赤字に落ちるまでの余裕度はどの程度か
2)借入金安全率…資金循環をどの程度借入に依存しているか
3)債務償還可能年数…現行の攻撃力で借金返済には何年を要するか
4)借入月商比率…借入金と商売の大きさのバランスは適正か
5)預金対借入金比率…預金と借入金のバランスに無理がないか

【健全力】
1)自己資本比率…過去の利益を蓄積し自立できているか
2)固定比率…身の丈にあった設備投資になっているか
3)固定長期適合率…無理な設備投資をしていないか
4)流動比率…資金の流れに問題がないか
5)当座比率…無理な資金繰りをしていないか

【資金力】
1)総資本回転日数…身の丈にあった経営活動になっているか
2)受取勘定回転日数…回収速度、引いては市場での競争力を有しているか
3)棚卸資産回転日数…適正在庫を意識した経営になっているか(粉飾はないか)
4)固定資産回転日数…遊ばせている設備がないか
5)支払対受取回転日数比…1日、1%の効果を意識した経営をしているか

『攻撃力』は、売上が上がっているか? 利益は出ているか? という大変分かりやすいテーマですが、『守備力』は表面的にはどうしても見えにくい指標です。結果的に問題にも気付き難く、表面化したときには手遅れ…、という事態にもなりかねません。

nさて、御社の守備力に問題があるとしたらそれはどこでしょうか? さっそく航海士である会計事務所に分析を依頼してみましょう。どこが問題で、どうすれば改善できるのかを確認し、すぐに対策を検討しましょう。


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第11回 『攻撃力』はこうして強化すべし!(その3)

攻撃力からは船(企業)の俊敏性も伺えます。船の積み込んだ荷物が多かったり、過度な装備があったりすると、航海にいらぬ負荷をかけてしまいます。人の体で言えば、脂肪が付きすぎて俊敏さが失われてしまっているイメージです。企業でいえば、保有している資産に無駄なものが無く、全てが目的達成のために必要な資産に厳選されているか確認することも、攻撃力を高めることに繋がるのです。

例えば、将来値上がりするからという理由で購入した不動産や、不必要なまでに高級な社用車、経費になるというキャッシュの視点で見れば不思議なロジックで購入した絵画、趣味と実益をかねるからというもはや経営とは全く関係のない、見事なまでに意味不明な理由で購入したゴルフ会員権…等々。保有している資産の大半がそのような無駄な資産の会社を見たら、皆さんはどう思うでしょうか? 経営者がどれくらい目的に対してぶれていないか? そんな事が決算書から見えてしまうのです。(決算書って恐ろしい…)。

さて、御社の資産は、一貫して目的達成に向かって活用されているでしょうか? 無駄な脂肪や無駄な積み荷になっていないでしょうか? 航海士である会計事務所にも相談して確認、対応を考えてみましょう。処理のしやすさでは、身体についた脂肪よりもまだまし? かもしれませんね。


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第10回 『攻撃力』はこうして強化すべし!(その2)

簡単に言うと攻撃力とは『稼ぐ力』です。稼ぐ力を強くするというと、多くの経営者の皆さんは『売上げをあげる事』と考えるかもしれません。しかしそれは間違い!です。大切なのは「付加価値」にあります。売上げが下がっても付加価値が上がれば問題ない場合もあるのです。そこで、今回は付加価値とは何か?について考えてみたいと思います。

例えば、文房具店に行って画材一式を1,000円で購入したとします。その画材であなたが絵を書いたとし場合、いくらで売れるでしょうか?1,000円以上なら利益ですね。

一方、同じ画材でピカソが絵を描いたとします。今度は幾らになるでしょう?おそらくあなたの絵より、遥かに高値がつくでしょう(これは話を分かりやすくする為の比喩であって、あなたの画力を否定するつもりは毛頭有りません)。同じ材料(原価)で書いた絵なのに、商品の価値は全く異なってしまうのです。それが付加価値であり、ブランド力なのです。

更に、1台の車を10人が10時間で造れる会社と、5人が5時間で造れる会社では、後者の会社の方が付加価値は高いことになります。この付加価値は生産力と表現されるのです。

ただ売上げを上げるだけならば、M&Aやマーケットの水平展開をすれば良いのですが、ブランド力や生産力を高めるには智恵が求められます。言い換えれば、攻撃力とは企業が持っている智恵の力なのです…。あなたの会社はどの程度智恵のある会社なのか?決算書からはそんな事が見えてしまいます(決算書って恐ろしい…)。

さて、あなたの会社の智恵の力はどの程度でしょうか? 早速、航海士である会計事務所と確認してみましょう!


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第9回 『攻撃力』はこうして強化すべし!(その1)

船(会社)の力である『攻撃力』『守備力』『持久力』のうち、『攻撃力』を強化したいと考えた場合、「どうすれば 攻撃力を強化できるのか?」を今日は考えてみたいと思います。
攻撃力の課題を知る為には、攻撃力がどのような構成要素になっているのかを見ていく必要があります。

攻撃力の構成要素は以下の通りです。

収益力生産力成長力
1)総資本経常利益率
2)付加価値率
3)売上高営業利益率
4)売上高経常利益率
5)売上高支払利息率
1)一人当り付加価値
2)一人当り営業利益
3)一人当り経常利益
4)労働分配率
5)固定資産投資効率
1)売上高増加率
2)付加価値増加率
3)営業利益増加率
4)経常利益増加率
5)自己資本増加率

当然ですが、経営者(船長)は経営(航海)のプロになるべきであって、財務のプロ(航海士)である必要はありません。指標の一つ一つの内容に精通する必要はないのです。しかし、問題がある項目については“別”です。それぞれを点検して、問題が発覚したら即座にその原因を明らかにし、対策を立てなければいけません。

さて、御社の攻撃力に問題があるとしたらそれはどこでしょうか?さっそく航海士である会計事務所に分析を依頼してみましょう。次回は1つ1つの分析指標を更に細かく見ていきたいと思います。


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第8回 『持久力』は会社の歴史であり、会社の未来の可能性!

前回、会社を永続的に発展させるためには『攻撃力』と『守備力』のバランスが大切である事を確認しました。今回は3つ目の視点である『持久力』について紹介します。『攻撃力』『守備力』『持久力』の3つの視点で特に大切な指標がこの持久力です。

次のようなボクサーをイメージしてください。このボクサーは恐ろしく強烈なパンチを持っていて、ガードも石のように固いとします。でも、体力が全くない為に1ラウンドも全力で戦えない…。このボクサーがチャンピンになれる確率はとても低いと言わざるを得ません。

経営も同じです。稼ぐ力がいくらあっても、風評被害の為に明日の売上げがゼロかもしれない。いくら回収効率がよくても、明日取引先が倒産するかもしれない。こちらの意に反し常に不測の事態は起きてしまいます。そのような環境の変化に耐えうる力が持久力なのです。

環境の変化に耐えるだけでなく、体力が有れば厳しい練習に耐えて、更なる力を手に入れる事ができるように、会社に持久力が有れば商品開発や、試験研究に予算を割く事が可能となります。持久力は会社の未来を切り開く原資なのです。

持久力は一朝一夕では身に付きません。過去からの蓄積の結果であり、会社の歴史なのです。だからこそ、今、この瞬間から持久力を備える事目指してください。その為に現在の我社の持久力はどの程度なのか?何ラウンド戦う力を持っているのかを確認しましょう。
(楠の木会の皆様はSHIPで持久力の確認ができます!)


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